ブランドと言って分かりやすいのは装飾系高級ブランドですが、エルメスと言えば誰もが知るラグジュアリーブランドです。代表的な商品であるバーキンは1つ100万円を超える超高額バッグでありながら、世界中の富裕者を魅了し売れ続けています。
世の中には機能にもデザインにも優れたバッグはありますが、エルメスのような高価格帯ではまず売れませんね。
この違いは何からうまれているのでしょうか。その答えは、ブランドとは何かを考えることでおのずと見えてきます。
あなたの働く会社そのものも販売するサービスや商品も、さらにはあなた自身もブランド化する対象です。社会の中で暮らす私たちは、私たち自身や提供するモノに対して常に他者から評価されています。ブランド価値があったなら受け入れられ何らかの便益を得ることが出来るでしょう。一方で、その逆であったならば拒否されて何も得ることができないということも起こります。先ほどのエルメスのお話と同じです。
ブランドについて知ること。自分や身の回りの物をブランド化する方法を身に着けることは、仕事はもちろん世の中を生きやすくするためにはとても重要なスキルです。
この章では、ブランドというものの基本イメージを得るための情報を整理して提供いたします。あなたの関わる会社や事業はもちろん、あなた自身のブランド力の向上のきっかけとなれたら幸いです。
本章で学べる事
- ブランドを一言で言えるようになる。
- ブランドの7つの効果が分かる。
- ブランドを作る3ステップを知る。
ブランドを一言で言うと?
品質と満足への高い信頼が確立された、モノやサービスの名称
高い品質を想起することも所有や利用による高い満足も得られないような名称はブランドとは呼べません。
例えば、「WILD TEMPER(ワイルドテンパー)」と言う名称の付いた、アウトドア好き男性向け腕時計があったとします。この腕時計について3つのシチュエーションを考えてみます。

①人間の生存できる環境であれば絶対に時刻がずれない上にGPS等のアウトドアに使える機能が充実している。
➁アウトドアに映えるデザインが施され有名な登山家が起用されたCMや広告で全国プロモーションされている。
③時計が正確でないうえにアウトドアに使える機能も付属していない。宣伝広告は何もなくただ「WILD TEMPER」の印字だけがある。
どうでしょうか?
この腕時計に対する印象は明らかに異なりますよね。①は本物志向の強いユーザから支持を得るブランドになるでしょう。➁はアウトドアに見た目の良さも意識する層に受けるブランドですね。そして最後の③ですが、、、。この例だと「WILD TEMPER」と言う名称からは何も良いイメージがわきません。
機能や性能などの品質に暗に一定の保証をつけることや、見た目の良さや有名人のイメージを付けることで所有することの喜びを喚起することが重要であることが分かります。
ちなみに、①と➁が混ざった商品はとても強いブランドになります。実際の商品ではカシオのG-shockがあります。機能よしデザインよし宣伝広告も多数展開されていますので所有することでの充足感もあります。
ブランド化で得られる7つの効果
ブランドの定義が分かったところで、次に商品ブランド化によって得るメリットを考えていきます。
はじめに、平易な表現で言うと「客が増えて市場で売れ続けてとても儲かる」と言えるでしょう。ただ、これですと纏まりすぎている為に理解が深まりませんので、もう少し因果に踏み込んで整理してみます。
7つの効果にまとめます。
固定客ができる。
ブランドの持つコンセプトや世界観に強く共感した顧客はそのブランドを継続利用することになります。洋服や靴などの身に着けるものにこだわりのある場合に、人によるブランドの好みはとてもはっきりと現れます。身近にも、同じブランドのものをいくつも持ち継続して購入しているアパレル好きの方はいるのではないでしょうか。
客が客を呼ぶ。
あるブランドを心の底からいいものだと感じた顧客は身近にいる人たちにそれを伝えていきます。SNSの発達した近年ではこういった口コミが商品売り上げに大きな影響を与えます。Youtubeやインスタグラムなどでインフルエンサー(発信力のある消費者)に推奨されたブランドが、売上で急上昇を見せる現象はこの時代ならではですね。
短所が隠される。
これはハロー効果としても知られるものです。目立つ長所があると他もよく見えるために短所が見えづらくなるというものです。外国産高級スポーツカーを見ると燃費や使い勝手の良し悪しで見ると国産の大衆車よりも圧倒的に悪いものばかりですが、ブランド外車が好きな消費者にとってはそんなことは全く目に入りませんね。
競合品に勝てる。
おなじような品質・価格帯・知名度の商品がある時、ブランド力がある商品が選ばれる傾向があります。例えば、新潟県の”魚沼産コシヒカリ”とその隣県である群馬県産の”コシヒカリ”。これらは品質にはさほどの違いがないにもかかわらず、代表的な日本産ブランド米としての地位を築いた魚沼産がより売れています。
売れる期間が長くなる。
ある商品をその機能だけで訴求して売る場合に比べて、ブランド化に成功した商品が世の中で売れ続ける期間はより長くなります。贈答品の定番として時代を超えて売れ続けている、”とらやのようかん”などがよい例ではないでしょうか。
商品の売上が増える。
ブランド力が付くと商品そのものに加えて魅力が増すために集客力が高まります。結果として商品の売れる数は増えるので売上増加の効果が見込めます。観光地である鎌倉にある鳩サブレのお店では同じものをまとめ買いする光景がよくみられます。ブランド力のあるサブレだからこそ起こる現象です。
利益率が上がる。
機能だけで商品を売る場合に比べてブランド力の分が付加価値として商品は高く売れるようになります。ブランド力には原価がありませんからこれはそのまま利益率を押し上げることになります。高級ブランド品とノンブランド品では売価に相当の開きがありますが、製造原価を知るとそこまでの開きが無いことに驚かれるかと思います。
とりあげた7つの効果を覚えやすいように3分類して、ブランドの効果の説明を終わります。ブランドの力によってお客さんが増える視点で3つ、市場への効果に2つ、収益への貢献に2つです。

<顧客への効果>
- 固定客が出来る
- 客が客を呼ぶ
- 短所を隠す
<市場への効果>
- 競合品に勝てる
- 長い間稼げる
<収益への効果>
- 売上を増やす
- 利益率を上げる
ブランドを作るために必要な3ステップ
ブランド力をつけることが企業にとってなぜ重要かがご理解いただけたかと思います。最後はあなたの会社やその商品をブランド化するには何をどうしたらいいのかを3点に絞ってリズミカルにお話しして終わりたいと思います。

一つ、コンセプト
二つ、ハート
三つ、ファン
3点です。それぞれ掘り下げましょう。
一つ、コンセプト
はっきりとしたコンセプトイメージを持ちましょう。
その商品が存在する意味と人々に与えることになる付加価値を明確にします。誰がどんな風にどんなシチュエーションで喜ぶことになるのかが鮮明にイメージでいるとよいです。
二つ、ハート
機能や合理性だけでなく感性に訴えましょう。
商品を買うのは人であり人は物事を決める際には必ずしも合理性で判断を行っていません。コンセプトの伝え方を定量的な機能説明などで終わさせず、それを手にした人の五感や感情がどう高ぶるのか喜ぶのかを創造し訴えるようにしましょう。
三つ、ファン
露出や口コミを増やしてファンを得ていいましょう。
イケてるコンセプトも感動的な訴え文句も知ってもらって実際に共感してもらってはじめて意味を成します。知られていないということは世の中に存在したことと同じですから。直接的なプロモーションやSNSを併用して商品のファンを増やし基盤を固めていきます。
コンセプトを固めて心に響く訴求方法を考えたら実際にそれをみんなに伝えていく。こういった書き方をすると簡単なように感じてしまいますが、これを継続的に根気よく世の中に訴え続けるというのは大変なことです。
今回はブランドと言うものについてのイメージを持っていただくことが目的ですのでここで終わりますが、自社や商品をブランド化するためのより詳細な方法が知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
本章のまとめ
・環境変化に応じた企業変革の具体的プランが描けない企業は多い。
・まずは「 “変革”の24マス整理(変革のニジマス整理)」を行うことを提案する。
・6つの企業構成要素のそれぞれに対し4つの変化深度で状況を整理。
・24マスから会社の変化に重要と思うポイントを絞り込むことで変革プランが作りやすくなる。
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