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あなたは、自分の会社のビジネスモデルを、頭にすぐイメージすることが出来ますか?
パッと、描くことができなかった方で、もしも、管理職以上の立場にいらっしゃるのであれば、要注意です。
経営戦略は企業経営に重要ですが、これだけで会社が収益を出し続けていけるわけではありません。
戦略を展開した先に、実際の現実世界で利益を出す仕組みを構築し、それが継続的に回り続ける状態までもっていって、はじめて戦略は意味を持ちます。
そして、この継続的に利益を出す仕組み、そう、ビジネスモデルと呼ばれるものですが、これを具体的にイメージ化しておくことは経営戦略の構築、展開にとってとても大切なアクションとなるのです。
現在と未来のビジネスモデルが常に頭の中にないと、現在展開している戦略も形骸化した意味のないものになる可能性も高くなります。
この章では、経営戦略とビジネスモデルの関係から、ビジネスモデルを描くことの重要性を示し、さらにいくつかの代表的なビジネスモデルの提示を行います。
自社のモデルが、パッと浮かばなかった方は、この章を読んだ後に改めて整理しておくこととをおすすめします。
本章で学べる事
- ビジネスモデルを一言で説明できるようになる。
- 経営戦略とビジネスモデルの関係がクリアになる。
- 代表的なビジネスモデルをまとめて知ることが出来る。
ビジネスモデルを一言で言うと?
研究学者は勿論、一般にも様々な解釈がありますが、必ず含まれる内容を簡単にあらわすと、このように言えるでしょう。
参考までに、いくつか、研究者による定義を紹介してます。
Allan Afuah:
「儲かる仕組み」
Mark W. Johnson:
「四つの箱の密接な関係(顧客価値提案、利益方程式、主要経営資源、主要業務プロセス)」
寺本・岩崎:
「顧客価値創造のためのビジネスのデザインに関する基本的な枠組み」
ビジネスモデルの書き方は?
ビジネスモデルは、商品や、顧客、収益の流れの相互関係を示すものであるのので、文章だけではなく、図解したものが多く使われます。
ここでは、いくつかビジネスモデル図でよく用いられるツールをご紹介します。
① BMC(Business Model Canvas)
スイスのビジネス理論家として著名なAlexander Osterwalder氏は、BMCをビジネスモデルを明示するためのフレームワークとして提唱してます。
『9つの要素』
1 . 顧客セグメント
2 . 提供価値
3 . チャネル
4 . 顧客との関係
5 . 収益の流れ
6 . キーリソース
7 . キーアクティビティ
8 . キーパートナー
9 . コスト構造
自社に関わる、これら9つの要素を以下の枠に記入しながら、ビジネスの収益構造についての理解を深めることができます。
出典:Strategyzer The Business Model Canvas(https://strategyzer.com/canvas/business-model-canvas)
➁ ピクト図
こちらは、なじみのある方もいると思います。
書き方はいたってシンプルかつ直感的で、ヒト・モノ・カネのビジネスの3大要素を、3W1H(「誰が(Who)」「何を(What)」「誰に(Whom)」「いくらで(How much)」)の流れが分かるように線で繋げたものになります。
ピクト図を記述するためのテンプレートを、こちらに用意しております。
ご自由に、お使いください。
経営戦略とビジネスモデルの関係
前述のビジネスモデルに対し、経営戦略は、以下の記事にもある通り、”会社の将来の形を示し意思決定の方針となる構想”です。
それでは、経営戦略とビジネスモデル、この二つの関係はどのようなものでしょうか。
ビジネスモデルは、会社でのある時期を見た時の収益モデルの形を指し、経営戦略はある断面のビジネスモデルから、未来のビジネスモデルへの道筋を示すものであると言えます。イメージ図にすると、このようなものです。
つまり、現状と未来のビジネスモデルを明確にせずに、経営戦略を展開することは、スタートとゴールのないマラソンを走るようなものになります。実現したい収益モデル、また、戦略を走らせるスタートとなる、今の収益モデルの状態が把握できずに、適切な戦略展開が出来るでしょうか?
経営戦略を構築する際に、ビジネスモデルをどう変化させていくのかも考える必要があるのがイメージできるかと思います。
代表的なビジネスモデル
これまでの歴史の中で登場した企業によって、世の中には実に様々なビジネスモデルが登場してきました。これからも、時代の変化とともに、新たな形のモデルは次々に生まれ出ることになりますが、ここではビジネスモデルの具体的イメージを持っていただくために代表的な例をいくつか挙げることにします。
1 . 顧客セグメント
地域ドミナント
概要 | 一定の商圏内に複数の店舗や拠点を構えることで、顧客の囲い込みや、経営資源を有効活用し、収益性を高めるモデルです。 |
事例 | コンビニエンスストア、スーパーマーケットなど、グループ企業やチェーン展開を行う店舗、など。 |
ポイント | 店舗の集中化により出店地域での知名度や信頼向上を図ること、流通効率を上げ、運営コストは下げる、地域内のカニバリゼーションを回避することなどがポイント。 |
ニッチグローバル
概要 | インターネットやITテクノロジーの発達により、言語や物理的なへだたりを乗り越え、国内より高収益取引の出来る海外ユーザに対して商品販売を行うモデル。 |
事例 | ネット商品物販、国内不動産仲介、など。 |
ポイント | ターゲットとする国の言語や商習慣の把握、ウェブマーケティングを戦略的に行うことで効率的に海外ユーザへのアプローチと取引成立までもっていくかがポイント。 |
プラットフォーム
概要 | なんらかの商品やサービスについて、提供側と受給側のユーザーとを仲介し、片方、または、双方から紹介手数料を取るビジネスモデルです。 |
事例 | 人材や不動産仲介、近年では、結婚紹介アプリ、など。 |
ポイント | 取引主体である、提供側と受給側が安心してやり取りできる仕組み、情報の量や質の高さ、などが整っていることが重要となります。 |
2 . 提供価値
ソリューション
概要 | 企業や個人が抱えている問題に対して分析や課題設定などを行い、自社の持つノウハウや方法論、システムなどを提供することにより、解決することで対価を得るモデル。 |
事例 | 経営コンサルティングサービス、業務支援システムの提供、など。 |
ポイント | 顧客となる企業や個人の抱えている問題の本質を見極めて、効率的につぶすことで、顧客が払うコストよりも大きな付加価値を創出できることがポイント。 |
アンバンドリング
概要 | 従来セットにして提供されていた商品やサービスを、バラバラにして個別に購入できるようにし、顧客価値を高めるモデル。 |
事例 | 格安航空サービスのLCC、個別に選べる定食屋、など。 |
ポイント | アンバンドリングすることで増えるコストと利益の総計での収益額が、従来のセット品よりも高くなること、また、競合他社の追随によるビジネスモデル不成立にならないように計画的に導入する事がポイント。 |
ライセンス
概要 | 商標やコンテンツなどの利用権を、ライセンスとして売買し、収益を上げるビジネスモデルです。 |
事例 | 人気漫画の映画化やグッズ化、撤退する前の三陽商会へのバーバーリー社のブランドライセンス、など。 |
ポイント | 他社にないブランド力や、知名度、人気を持つコンテンツがある場合に、異分野の企業とライセンス契約を行うことで、収益の幅を広げることが出来ます。 |
3 . チャネル
人的販路網
概要 | 顧客との接点をもつ個人や企業を販売チャネルとしてネットワーク化し、それらを通じて効率的に商品やサービスの販売を行うモデル。 |
事例 | ヤクルト、ダスキン、ソフトウェアの代理店販売、など。 |
ポイント | 商品そのものの魅力だけでなく、販売チャネルと顧客との人的関係性をいかに強化させ活用できるかがポイント。 |
4 . 顧客との関係
継続課金
概要 | 長期間に渡る、商品/サービスの利用により、確実に売り上げを確保していくモデルです。 |
事例 | 雑誌の定期購読、有料メルマガ、ウォーターサーバー交換・設置サービス、など。 |
ポイント | 長期的に利用してもらえる仕組みや、顧客を引き付けるコンテンツ作り、決済や金額の合理性や、解約をされないような工夫を行うことが重要。 |
5 . 収益の流れ
フリーミアム
概要 | 「フリー+プレミアム」を合わせた造語です。使用期間や機能に制限を設けた無料版を提供することで、まず多数の人に使用してもらうことを狙い、その後に一部のユーザーが有料版(プレミアム版)へと移行することにより収益を得るモデルです。 |
事例 | ゲームアプリ、ネットのニュースサイト、各種クラウドサービス、など。 |
ポイント | 無料版に多くの人が魅力を感じる商品とし多くのユーザを確保する事、また、その後にできるだけ多くのユーザが有料版へと移るための仕掛けやメリットを上手に用意できることがポイントです。 |
広告
概要 | メディア媒体に、他社の商品広告を掲載させることで広告料金を得るモデルです。 |
事例 | 新聞や、雑誌、ネットポータル、ブログ、など。 |
ポイント | 企業が広告を出すことでメリットを得るための宣伝効果、ブランド認知効果が期待できるメディア媒体であることが重要です。そのため、メディアのユーザの属性、数、メディアへのロイヤリティなどの高さがポイントとなります。 |
本章のまとめ
・ビジネスモデルとは、一言で言えば、「ヒト・モノ・カネの流れを含めたビジネスの収益の構図」、である。
・ビジネスモデルは、BMCやピクト図で図示される。
・ビジネスモデルは、企業のある時期の儲けの形、経営戦略は、今と未来のビジネスモデルをつなぐ道筋。
・ビジネスモデルは昔からある定石もあれば、時代の変化で新たに生まれるものもある。
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